今も昔も抜け毛や薄毛に悩まされている人は多いものですが、その多くは男性といったイメージがまだまだ強く、その背景には男性型脱毛症「AGA」は治療ができる病院も増えているため、それについてのテレビCMや広告を目にする機会が増えたことも関係していると思います。
しかし、実は女性でも抜け毛や薄毛に悩んでいる人はとても多く、AGAの女性版とも言える女性男性型脱毛症「FAGA」についても治療できる病院は年々増えています。
AGAやFAGAは頭皮が正常に機能しないことが原因で引き起こされる抜け毛や薄毛ですが、治療を受けたり、食生活やシャンプーなど日々の生活環境を適したものに変えるなどの対策なしには改善することはなく、頭皮ケアを行うことで乱れているヘアサイクルを正常化させることが必要となります。
しかし、女性にはFAGA(女性男性型脱毛症)とは別の原因から成る「分娩後脱毛症」という抜け毛トラブルがあり、これはその名の通り分娩後、つまり出産を経た女性に突如おこる抜け毛現象で、実に経産婦の70%がそれを体験していると言われており、妊娠・出産をした女性にとってはとても身近にある抜け毛トラブルなのです。
なぜ分娩後脱毛症が起きるのかというと、その原因はホルモンバランスにあり、女性は妊娠すると黄体ホルモンと呼ばれるプロゲステロンと卵胞ホルモンとも呼ばれるエストロゲンの分泌量が増えるのですが、これらの女性ホルモンが多く分泌されていると抜け毛が起きづらい体質となり、結果として妊娠中は抜け毛が少ない状態となります。
そして、出産を終えると妊娠中に増えていたプロゲステロンとエストロゲンの分泌量は急激に減少し、それによりそれまで抜け毛が少なかった反動もあり、出産後に一気に抜け毛が増えるのです。
AGAやFAGAとは異なり、分娩後脱毛症は体が妊娠・出産という特別な状態にあったことにより、一時的に乱れたホルモンバランスが引き起こす抜け毛のため、ホルモンバランスが整うと共に時間の経過によって自然回復し、抜けた部分もまた新たな毛が生えてくる特徴がありますが、抜け毛が続く期間は体質による個人差はありますが、出産後から始まり、3ヶ月~半年程度で落ち着くという人が最も多いです。
それには毛の生えるサイクル毛周期が関係していて、私たちの毛穴から生える毛は3つの状態があるのですが、今生えている状態の毛である「成長期」がまず1つ、2~6年の期間で存在し、それプラス毛が抜ける周期である「退行期」が2~3週間、次の髪の毛が生えるまでの休みの期間である「休止期」が2~3ヶ月というサイクルとなっているため、出産後に抜けた毛が次に生えてくるのは2~3か月後となり、分娩後脱毛症が早く解決する人は出産後にごっそり抜けてしまった毛が2~3か月後には生え変わり、抜け毛も目立たなくなるということになります。
ただし、出産後の女性の体は妊娠・出産という大仕事をやり終えた後の不安定な状態にあるので、ホルモンバランスが原因の分娩後脱毛症以外にもいくつも考えられる抜け毛の要因があることも事実で、慣れない赤ちゃんのお世話や新生児のお世話で慢性的な寝不足による体の疲れやストレス、分娩後脱毛症による毛の抜けるストレス、授乳をすることにより赤ちゃんに栄養が流れていくための栄養不足や寝不足による食欲の減退による栄養不足、などなど、心身ともに過酷な状態にあるため、これらの要因が抜け毛を助長させていることもあるのです。
分娩後脱毛症については、基本的には自然回復するものとして、予想外にごっそりと抜け毛があったとしてもそういう時なのだとあまりストレスを感じず、穏やかに過ごすことが大切です。